ユネスコ世界文化遺産現地研修会「函館市の世界文化遺産に学ぶ」を10月22日(土)に函館市で開催しました。
世界文化遺産の将来世代への継承を目標としたこの研修会では、登録の実現のため長く取り組んできた講師による講演と構成資産等の見学を行い、27名の参加者が世界遺産制度の目的や意義、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の顕著な普遍的価値と、その価値への函館市の構成資産の貢献などについて理解を深めました。
週末にも関わらず御参加いただきました皆様、及び開催に際して多大なご協力を賜りました函館ユネスコ協会、函館市教育委員会をはじめ関係各位に心よりお礼申し上げます。
日時:2022年10月22日(土)10時00分開場 10時30分開会 15時30分閉会
会場:函館市南茅部総合センター(函館市川汲町)、史跡垣ノ島遺跡・函館市縄文文化交流センター(函館市臼尻町)、史跡大船遺跡(函館市大船町)
主催:北海道世界文化遺産活用推進実行委員会 協力:函館ユネスコ協会 後援:函館市教育委員会
縄文遺跡群の登録のため、世界遺産としての推薦書準備などの重要な作業に携わった講師が、縄文文化の概要、ユネスコの世界遺産制度の目的と意義を解説したうえで、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界遺産としての価値は何か、函館市に所在する二つの構成資産がその価値の証明にどのように貢献しているかを説明しました。
世界遺産が文化政策や教育、地域の振興にどのような役割を果たすかにも言及され、参加者からその具体的な内容についての質問もなされました。
2021年の垣ノ島遺跡整備完了・公開以来、連日の来訪者に対応して遺跡を案内している解説員から、縄文文化と世界遺産制度の概要について改めて説明を受けたのち、地表から見える竪穴住居の跡や盛土遺構など当時の集落の跡に今も残る縄文人の営みの跡を見学しました。
構成資産が縄文文化の定住性や精神性を示す証拠として具体的に貢献している事実を学びました。
垣ノ島遺跡に隣接して2011年に開館した函館市縄文文化交流センターは、国宝「土偶」をはじめ函館市内の縄文遺跡からの出土品を豊富に展示し、この地域の縄文文化の具体像を学ぶことのできる施設です。
センターの学芸主任からの解説を受けながら、縄文文化の生業、工芸技術や交易、精神性などを具体的に示す出土品を見学しました。
大船遺跡はこれまでに120基を超える竪穴住居跡が確認されており、このうち規模の大きな6軒の住居跡や盛土遺構は発見されたそのままの位置に整備公開されています。
発掘調査の段階からこの遺跡の保護に関わってきた解説者が自らの調査の体験も踏まえて遺跡の特徴を説明し、参加者は住居への出入りや炉を囲んだ食事、クリの木材による建築作業など縄文時代の村での生活の実像に思いを巡らせていました。
講師や見学の解説者のプロフィール、講演の詳しい内容をはじめ、参加者の構成や当日アンケートの結果など研修会の記録を冊子として編集のうえ公開中です。
講演の記録はユネスコによる世界遺産保護の目的や考え方、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の全体像と顕著な普遍的価値を知るためのテキストとしても好適です。どうぞご利用ください(PDFファイル2.7MB)。