昨年に続き第2回となるユネスコ世界文化遺産講演会「広域にまたがる世界文化遺産と住民」を2023年11月2日(木)に室蘭市で開催しました。
今年11 月、当実行委員会が「北海道・北東北の縄文遺跡群」の価値の伝達のあり方を調査研究するため札幌市で開催した「国際プログラム」に伴い、国内外の専門家が道内の構成資産を視察しました。この視察旅行のため室蘭市に滞在した専門家を講師に迎え、130人の参加者が「北海道・北東北の縄文遺跡群」と同様に多数の構成資産からなる海外の世界文化遺産の保存・活用の実例を学び、世界遺産の価値を生かすうえで住民が果たす役割についての理解を深めました。講演会内容を記録した冊子を2024年2月3日から公開しております。
連休前夜にも関わらずご参加いただきました皆様、及び開催に際して多大なご協力を賜りました室蘭ユネスコ協会、後援者各位をはじめ地元の方々に心よりお礼申し上げます。
日時:2023年11月2日(木)18時00分開場 18時30分開会 20時30分閉会
会場:室蘭プリンスホテル(室蘭市中央町1丁目)4階「鳳凰の間」
主催:北海道世界文化遺産活用推進実行委員会
協力:室蘭ユネスコ協会
後援:北海道胆振総合振興局・北海道教育庁胆振教育局・室蘭市教育委員会
縄文遺跡群と同じ2021年、ドイツの南部からオーストリアを経てスロバキアに至る遺跡群「ドナウ沿岸西部のローマ長城」が世界遺産に登録されました。これは「ローマ帝国の国境線」を名称に冠する三つ目の世界遺産で、スコットランドから黒海まで連なる帝国北側の防衛線の一部を占めるものです。講師プロイヤー博士はこの世界遺産の保存・活用に関わっている中心的な専門家の一人です。
講演ではスライド多数を用いて、ローマ帝国の国境に残された遺跡群の概要と1980年代に始まるその世界遺産登録の長い歴史が紹介され、ヨーロッパの10か国にまたがる遺跡群をめぐって展開されている協力の体制や、 この遺跡群の価値の伝達のために各地の博物館や住民が重要な役割を果たしている状況が解説されました。将来は近東や北アフリカの国境線遺跡群にまで登録を拡大するという雄大な構想が実現すれば、文化分野での協力を通じた諸国民の相互理解というユネスコの理想を体現するケースとも言えるでしょう。
世界遺産となった遺跡群の価値を来訪者をはじめとした関係者に適切に解説し、その価値を将来に継承していくうえで、地域の住民が果たす役割とはどのようなものか。当実行委員会で副委員長を務める大津会長の司会により、「国際プログラム」に参加した専門家がプロイヤー博士の講演内容を踏まえて意見を交換しました。
講演内容の確認
地域の遺跡を世界遺産として登録することの意義
遺跡の価値を紹介するうえでの「新しい考え方」
地元住民の理解を形成することの重要性
住民のアイデンティティと遺跡群の関係 など
当日の録音に基づき、講演会の内容を記録した冊子を作成しました。講演・ディスカッション内容の詳細のほか、参加者アンケートに記入されたご質問に対し新たに起稿いただいた講師の回答は、世界遺産を含む文化資源の価値の伝達・活用や、その取組みへの住民の参加について考えるうえで多くの示唆を与えるものと考えております。こちらのリンクからご利用ください(PDFファイル2.2MB)。